始動
創世……ともよばれるべき事件から、数年……。
シャル=アレクゼントを失った愛人、セア=アレクゼントは一人で子育てをすることを決意した。
シャルが何故、身元を離れ消えたのかはわからない。
しかし、セアには彼しかいなかった。
この世界で愛していけるのは彼だけだと、強く思っていた。
だから、セアは一人で、ユウ=アレクゼントを育てることにした。
その数年のこと……セアにはもう一人、子供がいた。
ユウの兄にあたる存在。
しかし、兄はユウが幼い頃に、家をでていった。
それは突然のことだった。
セアはユウには兄の存在を隠すことにした。
創世から、約六年の月日が流れた……
未だ謎の力、『ソル』。
『ソル』は、主に光と闇の属性に別けらた。
人々の持つ『ソル』には、感情が『ソル』に混ざるらしい。
憎しみならば『闇』。
愛しさならば『光』。
と、いうように…。
だが、それは『ソル』を上手く使える人の話しでしかないのだった。
ただ『ソル』を持つだけの人は、『ソルを使い、具現化を行える人』というだけでしかないのだ。
創世から数年が経ち、あらゆる謎が現れ、解明されないままである。
かくして六年育ったユウ。
彼には幼な馴染みとも呼べるべき大切な存在ができていた。
ユウは『ソル』の力が、小さいのだった。
具現化も、行えるのは光る球を創り出し、輝かせて楽しむ程度。
何の力もないのと同じようなものだった。
ユウは気弱で明るい少年だった。
しかし、『ソル』で、世間一般に言う、『いじめ』に遭う。
彼はいつも泣いていた。
それでもいつも仲良くしてくれたのが、幼な馴染みの一人の女の子だった。
名を、ミュウ=ハーネット。
それから二年後……創世から約八年の月日……
ユウはミュウと近くの川で遊んでいた。
しかし、そこである事件が起きた。
ユウは咄嗟に、ただミュウを守ろうとした。
閃光……
ユウの『ソル』はそれ以来、具現化を行えなくなった。
幼い…頃の大切な思い出。
ユウはそれだけを頼りに、『ソル』の力を失ったことから立ち直る。
僅か八歳にて、心に抱えたものだった。
そんな中、『レマル』は未だに森から現れたという情報が絶えない。
いじめ、創世の世界、日常が、そんな中を生きていくユウの……人生を変えることとなる………。
ユウ 『ただいまぁ…』
セア 『おかえり。どうしたの? 顔、腫れてるわよ?』
ユウ 『クラスの子とさ、喧嘩になっちゃって。教室の箒で盾にしようと思ったんだけど、ソルで折られちゃった。あはは。』
セア 『…大変だったのね。今日はミュウちゃんは?』
ユウ 『ミュウは、えっと、友達と遊ぶって。じゃ、僕、ソルの訓練してるから夕食出来たら呼んで。』
セア 『……(まだソルが使えると信じ込んでる……シャル…助けてあげて。』
『ソル』を失ったユウ、まだ使えると信じ日々訓練するユウ。
それを見る母、セア=アレクゼント。
物語の歯車が今、動き始めたのだった。
この物語に名はない。
なのるならば、あえて『創世』と呼ぶだろう。